お口の周りの筋肉バランスを整える
口腔筋機能療法とは
お口周囲にある筋肉のバランスを整え、正常に機能させるために行う訓練を口腔筋機能療法(MFT/Oral Myofunctional Therapyの略称)といいます。
当院では、お口周囲の筋肉がきちんと機能できていないお子様に、口腔筋機能療法によるお口のトレーニングを実施しています。
口腔筋機能療法の目的
私たちが普段の生活の中で行う「食べる」「飲む」「話す」などの行為では、唇や舌、のど、頬などにある様々な筋肉が使われます。これらの筋圧のバランスがつりあっていると歯は正しい位置を保つことが出来ます。
しかし、いつもお口をぽかんと開けていたり、お口で呼吸していたりすると唇と舌の筋圧のバランスが悪くなり
結果的に、
- 開咬(奥歯で咬んでも前歯が閉じない)
- 上顎前突(いわゆる出っ歯)
などの不正咬合が生じる場合があります。
つまり、お口の周囲の筋肉がどのように機能するかによって、歯並びや噛み合わせ、そして顎の骨格にいたるまで、影響を受けてしまうことがあるのです。
矯正治療によって、開咬や出っ歯などの歯並びを改善することはできますが、お口周りの筋肉が正しく機能していないと、矯正治療が順調に進まないことがあります。また、せっかく歯並びが良くなっても、矯正治療後に後戻りする(もとの悪い歯並びに戻ってしまう)ことも少なくありません。
当院では、口腔筋機能療法を取り入れることで、お子様の成長に合わせた理想的な口腔環境作りを目指しています。
口腔筋機能療法で行うこと
- 噛む
- 飲み込む
- 話す(発音する)
- 鼻呼吸をする
などの行為を、正常に行えるようにトレーニングします。
そのために、
- 舌の筋肉の訓練
- 頬や唇など、口周りの筋肉の訓練
- 正しい舌の場所を覚える
- 正しい唇の状態を維持する
など、日々の生活の中で正しい状態を習慣づける訓練を実施していきます。
口腔筋機能療法のメリット
訓練を重ねることで、お口周囲の筋肉がバランスよく機能できるようになります。
矯正治療を行っている場合は、矯正治療自体の精度を上げ、治療計画もスムーズに進むようになります。
また、矯正治療が終了した後も、後戻りのリスク軽減が期待できます。
お口の周りの筋肉バランスが悪くなってしまう要因
口周辺の癖
- 指しゃぶり
- 爪、唇を噛む癖
- 舌を突き出す癖
以上のような癖が習慣化すると、お口周囲の筋肉の機能に悪い影響を与えます。
口呼吸
鼻呼吸が困難な状態(鼻炎やアレルギー、扁桃肥大やアデノイドなど)は、口呼吸をしがちになります。
口呼吸が続くと、顎の位置が下がってしまい、舌の位置も正しい位置に置かれない状態となります。
その結果、歯並びや顎の成長に悪影響を与えます。
食習慣
現代では、加工食品が好まれる傾向にあり、「噛む」という習慣が身についていないお子様が多くなっています。
しっかりと噛まなくても食べられるような軟らかい食べものばかり好んでいると、口周囲の筋肉がうまく働かなくなってしまいます。
不正咬合や骨格異常
遺伝性の強い骨格性の下顎前突(受け口)のような場合、口周囲の筋肉が正常に働きにくくなります。
舌の異常
舌小帯(ぜつしょうたい)
舌の裏側にあるスジを舌小帯といいます。
舌小帯が短かく「舌ったらず」の状態になると、舌の運動が制限されてしまいます。
結果的に、顎の成長の妨げや歯並びが悪くなる要因になります。
口腔筋機能療法の進め方
当院でのトレーニングとご自宅での反復練習
まずは診断から
まずは、お口の周りの筋肉のどの部分の機能が悪いのかをチェックします。その後、具体的な治療計画を立てていきます。
順番にトレーニングを実施
噛んだり、飲み込んだり、発音の仕方のトレーニングを行います。
また、舌や唇の正しい位置を体に覚えさせていきます。普段から無意識の状態でも、正しい位置に置けるようになるのが理想です。
トレーニングのポイント
おうちでの反復練習
理想は毎日、おうちでも決められたトレーニングを行うと、より高い効果が期待できます。
日々の地道な練習が、良い成果に結びつきます。毎日根気強く行うことで、効果が徐々に現れていきます。
段階的に次のトレーニングへ
1つ1つの課題を順番にクリアして、次の段階のトレーニングに進んでいきます。
歯並びを悪くしてしまうさまざまな癖に注意しながら、繰り返し練習を重ねていきましょう。
無意識にバランスのとれた正しい筋肉の使い方ができるようになることが目標です。
来院は1ヶ月に1回程度を目安に
1ヶ月に1回程度、当院へ来院していただき、日々の成果をチェックさせていただきます。
安定した歯並びを維持していくため、またお口の健康を維持していくために、口腔筋機能療法はとても大切な治療の一つです。
一緒に楽しみながらトレーニングして、理想的な口腔環境を手に入れましょう。